以前の記事でも扱った『山椒魚』。岩波の「きょうの名言」は、この『山椒魚』からの一節。
いやさあ。『山椒魚』ってのは出だしからぶっとんでるよね。
山椒魚は悲しんだ。
彼は彼の棲家である岩屋から外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることができなかったのである。
これはさ。「今日、ママンが死んだ。もしかすると昨日かもしれない
」(『異邦人』カミュ)みたいな衝撃。
『山椒魚』には他にも名言や迷言があってさ。
「なんたる失策であることか!」
「いよいよ出られないというんならば、俺にも相当な考えがあるんだ」
「くったくしたり物思いに耽ったりするやつは、莫迦だよ」(これは発言のタイミングが愉快)
なんかコメディなのかトラジディなのかわかんないけど、読者は読みながらザムザの妹の悲哀を感じてしまったりするんだよねえ。
で、今日の名言の「ああ寒いほどひとりぼっちだ!」。
この比喩ってさ。あまりに使い古されているもんなんだけど、「ひとりぼっちだから寒い」(こっちは比喩で使うこともあれば、単なる事実の描写に使うこともある)という意味に、オートマチックに誤解してしまう可能性もあって面白い。
どっちも使い古された表現で、パロディとしてしか使えないような表現になってしまっているけれど、それでも誤読してしまいそうな類似表現があるってことで、もし直接に使ってしまってもなんか「異化」のパワーを持ってる。
こういう表現ってのは珍しいんじゃないかな。
表現と言えば。
今日Jリーグの試合を見てると、アナウンサーが「あわやゴールかという…」という表現を使っていた。ジジイな私は未だにこの表現が気になる。でもこういう場合に「あわや」を使い得るかどうか、少なくとも30年前から議論になってたんだよな(苦笑)。それだけ昔から言われている表現なんだから、今はもう市民権を得た表現だと解釈すべきなんだろう。
でも。30年も前から使われていて、それでもまだ違和感を感じる。そんな表現もまた、ちょっと珍しい部類なのかもしれない。
投稿者 前田博明 : 2004年11月08日 03:47 | トラックバック