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2003年7月14日 ◆ 「連絡と切断」 −講義−
今日の先生は孔令文先生。
授業開始前「前田さん、なんか元気ないんですって?」とおっしゃってた。私は先週、アマの碁打ちとしてあまりに恵まれた一週間を過ごしてしまったので「碁を打っていて楽しくない」とかそんなことを口に出せない。「先週一週間で、3日もプロの先生に指導碁を打って貰っちゃったんですよね」という話をして、私の碁に対するモチベーションの話題からは話をずらしてしまった。
その話を受けて孔先生。なんか話がずれてない? という疑問の表情を浮かべながら「それは前田さん、一ヶ月分の給料を棋院に振り込まなくちゃいけないんじゃないですか?」と(爆)。
授業は「連絡と切断」。
たとえば下の図で次の一手は(初心者向け)?
ハッピー・マンデー15級くらいならノータイム。答えは三の4。
じゃあ下の図はどうかな? わりと「手筋」っぽい問題。
ハッピー・マンデー 13級くらいはほんのちょっと考えるかな? 10級くらいなら脊髄反射で正解。答えは「この一手」で七の17。
こういう問題を見ていると、「連絡と切断」なんて、碁を打つ上で「あまりに当たり前のこと」に思えてしまったりもする。しかし実戦になると思わぬところを切られて凄く厳しい戦いになってしまったりする。あるいは「連絡」ばかりを気にして打ち進み、相手に大場をみんな打たれて大敗なんてこともある。こういう「連絡と切断」の手筋も、「大局観」という基本があっての話なんだろうな…
尚、今日は講義の前に(久しぶりの)級位者の日。最初に高校生と対局し、ひやひやものの勝利(20目程度)。これは序盤で相手の石に意味を認めすぎて手が縮こまるといういつもの悪い癖が出た。ただ最近のマイブームで「地で先行できるときには地を取る」という方向性が功を奏しなんとか逃げ切った。
最近のこの「地を先行する」というプラン。これは非常な混乱の後に辿り着いた境地。ちょっと長くなるけれど書いてみる。
初心者の頃。「戦い」というものが全くわからなかったせいもあって、「戦い」が大嫌いだった。三ヶ月間も「キリ」が打てなかったというのはあちこちに何度も書いているけれど、それもこの「戦い嫌い」の一環。
その頃は布石の勉強ばかりをして、自分で言うのもなんだが「綺麗な布石」が打てるようになっていた。そしてその綺麗な布石をいかに地にするかということばかりを考えていた。今にして思えば「綺麗な布石」とは、戦いにも備えたものなので戦いを挑まれれば戦うべきだったのだろうけれど、「いかに戦いを回避するか」ばかりを考えていた。
棋歴六ヶ月になる頃。「中国流」に出会い、そして「戦い」に関する本を何冊か読んだ。そこで得た結論。「相手に無理な戦いを挑ませないようにするためには、こちらから戦いを仕掛けて相手の無理を咎めておかなくてはいけないのだ!」。
なんかこう書くと「大国主義」みたいでちょっと嫌〜な気分になるけれど。この頃からつい最近までの私の棋風は「戦いを避けるために戦う」という感じ。最近世間一般にも「厚い碁」というのが流行していて(?)、「地は囲うな」とか、「相手を厚みに押しつけるようにせよ」という言葉が心地よく私の耳に入ってきていた。
ただ。ネット碁などを打っていると、どうも気持ちよく勝ちきれないことが多くなった。相手が明らかにシタテだと思われる場合にも碁が紛れる。
私の打つ碁がボロボロだということは認める。しかしそれでも私に百何十目の差で負ける人がいる以上、最弱ということもないはずだ。それに打ち筋を見て相手が明らかにシタテの場合でも碁が紛れるのはなぜなんだろうと三日三晩、寝たり起きたりして考えた。
「俺は得するべきところで得ができていないぞ!」。
当たり前のことなんだけど、それが辿り着いた結論。相手の「戦いの芽」を摘むことばかりに気を取られて、相手が「差し上げます」と言っている三十目ほどの地すら、あっさり頂いてしまうことをせずに勝負を紛らせていた。
プロの対局を見たり、あるいは五段くらいの人と打ったりしていると、なかなかこちらに三十目とか四十目なんていうデカ地をくれることはない。だから三、四十目の地が囲えそうに見えるときにはそれが「罠」であることが多い。のんびり囲おうとすると痛い目にあう。
しかし私くらいの棋力では、ときに一箇所で 50 目の地を囲ってしまうことすらあり得る。「ここの地を取ればデカイ」。そう思うときには素直に地を取ってしまう。
結局私は「地」と「戦い」の相互作用を理解できずに、初心者の頃は「地をくれ、地をくれ」と言い続け、そしてある程度打てるようになってからは「地を囲うなんてダセーぜ」と言い続けてきたんだろう。今にしてようやく「どっちが大きいの?」というバランスで打てるようになってきた気がする。
ま。また三ヶ月後には別のことを言ってるかもしれないけれど、これが現在の私。「地で先行できるところは先行する」。
で、級位者の日で打ったのはその一局のみ。ちょっと変な碁を打って胃が痛くなったので休憩していると、ハッピー・マンデーの生徒の方(年長の女性)を発見。いろいろお話しさせて頂いて、そして聞いてみると別の生徒の方と待ち合わせて「特訓」をするのだと言う。
その対局を見せて頂きつつ、私なりにいろいろと解説させて頂いた。なんか解説しているうちに後ろに生徒じゃない人までいらして聞き入っていた(^^;。「この聞いてる人、どのくらいの棋力なんだろうなあ。『ふっ』とか思われてないかなあ」と不安にもなったんだけど、随所で「うんうん」と頷いていてくれたのが嬉しかったな(^^;。
授業が始まってからも、その方々は私の弟子たちに「今日は前田さんに教えて頂いて」なんてたくさん言ってくれたそうだ(^^)。照れるぜ(笑)。
あ、そうそう。昨日はいつもの「Tシャツ短パン」と違って、ブルックス・ブラザーズのスーツにポールスミスのネクタイ、そしてポリーニの靴、そしてさらにポールスミスのパンツなんて格好をしていたのも、年長の女性に受けた理由かもしれない(大笑)。
そこでの対局を見た後。級位者の日で打った高校生が対局相手がいなくて暇そうにしていた。なので「じゃ、打とうか」と打ってみた。
今回は相手の棋力もだいたいわかったということでリラックスして対局。相手の子は高校の囲碁部とのこと。だから細かい手筋はわりと勉強していたけれど、でも先生と打つときは置き碁が多いとのことで、攻めにやや無理なところが見られる。そこを突いて相手の種石を殺しつつ地でも先行。彼の厚みっぽいところを食い破っているうちに碁は大差。
その段階で、まだひとつだけ形の決まっていなかった相手の隅の三々に突入。高校生はぼやいた。「そこまでするんですか! 勘弁して欲しいなあ!」。
高校生曰く。三々というのは、メジャーリーグにおける盗塁のようなもので、勝負が決している場合には入っちゃいけない場所だとのことだ(笑)。なるほどなあとも思いつつ、でも隅からさらに相手の石を取り込んで相手を投了に追い込んだ。
最初に打ったときに二十目くらいしか差がなくて、ちょっとむかついていたんだ(笑)。
打ち終えた後に、またその高校生に『序盤の打ちかた』(小川誠子)の本を薦めておいた(笑)。
すごく楽しいハッピー・マンデーだった。
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