カワイイ、弟子のコバピ。
彼女は「君、棋歴は俺と同じくらいだよね」というとブンブンと首を振る。
彼女は「君、俺の互先で勝ったことがあるよね」というとブンブンと首を振る。
彼女は「君、本当は俺と五子くらいだよね」というと泣きそうになる。
彼女は、一度すばらしい七子局を打ったことがある。師匠に褒められて翌朝鼻血を出したことがある。
そんなコバピ。
一度「そこまで俺に勝てないのなら」と井目中四目で打ったことがある。そしてなんと負けてしまった。泣きそうになるコバピに、さすがに陰険で名高い師匠も慰めの言葉をかけようとしたが、言葉が見つからなかった(笑)。
そんなコバピ。
先日令文先生に「え、前田さんとコバピさんは同じくらいの棋歴なんですか?」と絶句されていた。泣きそうになるコバピに、さすがは陰険で名高い師匠は大笑いしていた。
そんなコバピが言う。
「師匠はペア碁に出たとき激昂したんですよね」。むむ〜。その話題を俺に振ってきたのは、ライバルである孔令文しかいないんだぞ(笑)。師匠はちょっと頬を引きつらせながら言った。「そうだが? 何か問題ある?」。
コバピは言う。
「私と出てもやっぱり激昂しちゃうんでしょうか」。むむ〜、コバピ。それはどういうつもりで「私と出ても」なんだ? 君はアキサンカクは打つし、中盤の半コウは継ぐし、ケイマの突き出しは打つし、俺に井目中四目で負けるし、以下略だし。
「私、やってみたいんです」。
んげげ。他のことなら俺は君を応援するだろう。「大会に出たいんです」なんて言うのなら、特訓だってやってやる。しかし、俺の深い心の傷である「ペア碁」に出たいと言い、しかも俺と出たいというのは。。。
殴ろうかはたこうか蹴ろうか突き飛ばそうか悩んだ。でもどれを選んでも後々問題になりそうなので心を落ち着けた。
「君ね。俺がペア碁でどういうことになったかわかってるんだろうね?」。
私は去年、自分の棋力の低さを顧みず、ペアの打つ手にマジギレして、大会途中で帰ろうとしたことがある。
「あ、やっぱりだめですか」。
当たり前だっつーの。そもそも俺にペア碁の話題を振って命があることを幸運に思えよとちょっとプリプリ。
「だいたいさ。君、俺が何度言っても意味不明なボウシやアキサンカク打つでしょ? そんなことをして俺をまたキレさせたいわけ?」。
そういう私に「もう(そんな手は)打ちません!」と主張するコバピ。「いや、もう打ちませんってさ。これまで何回言ったんだよ。アキサンカクなんてわかりやすい悪手を百回も打った君の言うことなんて信じられないね」。「ペア碁」という単語で心中穏やかならぬ私は徹底的に冷たく言い放つ。
「途中で帰ってもいいです」。コバピが言う。「あほたれ。途中で帰るってのはみんなに迷惑かけることだろうが」。以前帰りかけた自らを棚に置いてコバピを叱り続ける。
「だから私、途中で帰らなくて済むように頑張ります!」。
何が君をそうさせるんだ>コバピ。なぜ俺と同時期に碁を始めて、そして今や十三子置いても負けてしまうような状況で碁を打ちたがる? そしてなぜにわざわざ師匠の「タブー」に触れようとする?
「ペア碁にもし出たとして、その後君とは一生碁を打ちたくなくなるかもしれないよ?」。そういう私に「では師匠の棋力は何段で出せばいいですか?」とコバピ。
わかった。コバピ。今度だけは君を信じてみよう。そしてまた俺に褒められて、鼻血を出すような碁を打ってみてくれ。
いやぁ、俺。やさしい師匠だな(爆)。