2005年04月14日

囲碁と形 〜 「厚み」ってなんだろう?(1)

厚みとはなんだろう?初段を名乗り始めた頃、強い初段と打ってみて、彼我の「カタチ」の差に驚愕した私です。「カタチが打てるかどうか?」というのが有段者・級位者の差なんだろうなあと感じました。

そんな私の(エラソーな)「カタチ」講座。ちょっと間が空きましたが第3回です(^^)。本日のお題は「厚み」。

「厚み」ってのはいろんな定義がありますが、まあ「どうやっても死にそうもない石」ってのがわりと簡単な定義じゃないでしょうか。

「厚み」ってをテーマによく出てきそうなのは左図(図は『布石のベスポジ』より)。この図で「厚み」は左下の白。この石を殺そうと思ったら何手連打すればよいでしょうか^^? まあ普通はこんな石を取ろうなんて考えません。そして「取ろうなんて考えない」というところから一歩進んで「厚みに近寄るな」という格言が生まれてるんですね。

ちなみにこの図で黒番、どこに打ちましょうか? 答えは右下の星から下辺に向けての大ゲイマ。白の厚みの働きを制限しているんですね。厚みがあると、そこに近づいてはいけないけど、厚みを働かせてもいけない。その辺のバランス感覚が難しい。

この図で下辺への大ゲイマ以外を打てば、白は当然右下の星の石にかかってくる。相手の厚みが控えているので挟むわけにも行かず、黒は受けることになるでしょう。すると白はトビくらいを打って下辺を広大な地模様としてまとめられてしまうんですよね。これだけの厚みがあれば、もはや打ち込むわけにもいかない。

やきもち「じゃあ厚みを働かせないように、下辺の星下あたりに打ったらどうだろう?」。そう、最初のうちはどうしてもそう考えてしまいます。でもそれこそ厚みを背景に持つ白の思うつぼ。白は当然打ち込んできます。

右図のような進行が考えられますか?

星下に打った黒はまだまだ生きてない。打ち込んできた白も生きていませんが、右上にある白と連絡しそうだし、また右下星の黒を攻めることにより、簡単に生きることができそう。

こうなってしまうと、黒が右辺をまとめることもできなくなるし、中央の黒を生きにいくうち、ヘタをすると上辺の黒まで痛んでしまうかもしれない。こうなってしまえば、もう黒にほとんど勝機がないと言っても良いくらい。このような進行になってしまうきっかけとなった黒星下の手を「ヤキモチ」と呼びます。白の方から見れば「厚みを攻めに使う」ことができていて、もうまさに理想的なのです。

最初の図となったとき。考えるべきは「白の厚みに働いて欲しくない」ということ。でも他にも考えるべきことがあります。白が左下で厚みを築いたのは、黒が左下隅に「実利」を取ったからです。つまり「実利と厚みの分かれ」になってる。白は「厚み」という武器を手に入れたけれど、黒も「実利」というキャッシュを得てる。

すると、そこで「白の厚みに全く働いて欲しくない」と考えるのは「強欲」なのです。自分が左下に取った実利分くらいは働かれてもしょうがない。そう考えるのが「バランス」です。「ちょっと働かれるのはしょうがないけど、自分の実利以上に働かせたくない」と考えるのが正しい。

よって右下を大ゲイマでシマリ、「白さん、厚みを少々働かせるのは仕方ないので認めます。でも黒もこのシマリによって右下隅にまた地ができそうでいいでしょ!」と言ってみる。

白は自分の厚みの働きを制限され、かつ黒にさらに地を稼がれそうで難しい判断を強いられる局面となります。右下大ゲイマにしまったところを次にサガリでも打たれたら地が大きすぎる。だからと言って裾ガカリなどでケシにいったときに右辺上方の白が痛まないだろうかなどと考えることになりますね。

この「ヤキモチ」というのは、私たちの碁には非常に多く出てきます。前に問題になった記事(苦笑)の黒5。これもここからいろんな打ち方があるんですが、初心者がこれを打つとき、その背景に「ヤキモチ」があることが多いんですよね。左下の白4にシマリを打たれたあと、この左辺での白の働きを乏しくしたいと考えて打ってることが多い。確かに白の働きはある程度制限できるんだけど、自らのテリトリーである右辺を痛めてしまったりすることが多いんですよね。そういう発想ばかりしてるとなかなか碁に勝てなくなってくるし、上達しなくなってしまう。

ところで「厚み」。この記事では「「どうやっても死にそうもない石」」という定義を採用しました。ってことは、冒頭に挙げた図みたいな「誰が見ても厚み」というカタチだけでなく、もっと少ない石計で「厚み」になってることはないんでしょうか? それはありますね。次回はそういう「厚み」を取り上げてみたいと思います。

尚、余談として、星からの大ゲイマの使い方もついでに意識してみてください。私は弟子たちに「星からのシマリは小さいよ」といつも言っています。手堅く星から小ゲイマに締まっても、まだ三々が確実になくなるわけじゃない。簡単に裾ガカリなんか打たれても、さほどの地が隅に付くわけでもなく、単独で星からシマルのはとても価値が低いことが多い。

でもこの記事で取り上げた図のような場合は大ゲイマがすごく効果的。このように、星からシマル場合には「相手の厚みを制限する」場合に「ツカエル」ことが多いですね。

投稿者 前田博明 : 2005年04月14日 12:28 | トラックバック