「この本は適切な時期に読めば絶対強くなる」と、人に勧めているのが依田紀基九段の『アマの俗筋三つの大罪』。依田九段は本書の中で、「俗筋」を以下の3つに類型化しています。
「ノゾキ」や「コスミツケ」が1番目の代表で、無駄な利かしやむさぼりが2番目の代表例。そしてアキ三角が三番目の範疇に入りますね。今日は1番目の「敵を強くする俗筋」を見てみますが、その中では「コスミツケ」が一番わかりやすい。
たとえば上図のようなコスミツケはあまりにも代表的な、かつ初心者の多くが打ってしまう悪手。
これを悪手というのは黒1と立つことにより黒石が強くなっていることがまずひとつ。しそて、白4となったとき(これは極端な例ですが)右下隅が全く守れていないということもあります。つまり白のコスミツケは中央に向けての黒を強くし、かつ隅の地も守ってないということになる。
中でも相手の石を強くしてしまうというのは最悪。
右下、一番代表的な定石で分かれれば右図のようになるところでしょう。この図なら黒ばかりをいたずらに強化していることがない。上下両方からツメルことになれば、この黒は結構もがかなくちゃいけなくなるし、また上から利かして自分の地を広げていくのに役立てることもできる。
コスミツケを打ってしまう人は、まず相手の石を強くしてしまうことの悪さを知らない人が多いのかな。また、最初の図の黒5があるんだということを知らない人が多いんでしょうね。中には黒5が手になってることを知っていて「まあこの相手は打ってこないだろう」なんてことを考えて、コスミツケで騙しにいく人もいますが、まさに志が低い。
もうちょっと高度な(?)例を挙げておきましょうか。『アマの俗筋3つの大罪」に掲載されていた図。
上の図はアマ有段者同士の実戦例とのこと。文脈から、白14が大悪手なんだろうと想像はつきますね(^^)。
この図は黒15と立たせて黒を強くしている(下辺左方の地を守らせているだけじゃなく、後に自分に対する攻めに使われてしまう)だけでなく、自分の白6、14を重くしてしまっているという意味もあります。黒23までとなって、下辺の二子の扱いが難しすぎますね。
もちろん、板垣死すとも白14を打つ自由はいくらでもあるんですけど、それが碁を悪くするんだ、ひいては級位者のうつコスミツケなんて大半は悪手だということを知っていないと、囲碁がいつまでも指運ゲームになってしまいます。
ところで石のオモイ/カルイ。私ねえ、初段になった頃も「相手を重くする」という言葉がなかなか理解できませんでした。「重くなる」ってことは、すなわちそこに相手の石が増えてるんですよねえ。そうすると、ビビリな私から見れば「相手の石が強くなった」ように見えることも多かった。と、いうか、当時の私が「よし重くしてやろう」なんて思ってると、相手を強くしてることが多かった(爆)。
でも、上に載せた依田九段の本からの図を見てみると、下辺の白二子が「重くなってる」ってのがなんとなくわかるんじゃないでしょうか? 白14を打たなければ、外から利かして白6を捨石にするなんて作戦も取れたのに、14、15を交換してしまうと、簡単には捨てづらくなってしまってる。かと行って動き出して得をするとは思えない形をしていますよねえ。
話を戻してコスミツケ。「私たちレベルが打つコスミツケがたいてい悪手だというけれど、でもコスミツケという言葉がある以上、その手を打つシーンがあっても良いのではないか」と思う人もいるかもしれません。それはもっともですね。
コスミツケを打っても良いシーンの代表例は左図。九子局で白が小ゲイマにかかれば、これに対してはコスミツケを打っても良い。なぜか。
これは黒が白を「攻めている」からです。つまり「強烈な攻め」がある場合にはコスミツケもあり得る。白1で小ゲイマにカカリ、それにコスミ付けられたら白はほぼ立つしかない。と、いうかそこで立たない白とはあまり打たない方が良いくらいかもしれない。
コスミツケを打つことにより、白の三々フリカワリをなくし、かつ白が動いてきたところで右辺星のサガリまで打てれば白の「技」が決まりそうなポイントにどんどん先着することができる。多子局では、相手の変化の可能性をどんどん潰していくのが勝利への近道(黒はどんどん形を決める)。
逆に、攻めのないところでコスミツケを打つのはほとんどが悪手。そのことを頭に入れ、「感性」でコスミツケを打たなくなれば、それだけで碁はちょっと強くなります(^^)。
投稿者 前田博明 : 2005年04月29日 17:18 | トラックバック