自分がわりと「地の碁」を打っていながらなんですが、「薄い碁」には若干嫌悪感がある私です。私レベルでいると「薄い碁」の勝率が高かったりするんですが、ウワテから「厚い碁」でこてんぱんにやられると「格好良い!」と惚れそうになっちゃいますよね^^。
そんな私。これまで高尾紳路八段の碁にはあまり感心を持っていなかったんです。四天王とか言われてもいまひとつぱっとしなかったし(失礼)。でも今回の本因坊戦第三局。これははっきりと感動しました(^^)。
以前とあるプロの方が言っていたのです。「日本の碁は今、中韓の碁に押されている。でも日本の『考え方』が劣っているとは思わない。いつかまた日本の『考え方』を持つ強い棋士に出てきて欲しい」。
今や日本の囲碁界もすっかり「中韓スタイル」に席巻されている感じですが、今回の高尾紳路八段の碁はまさに「日本の考え方」を貫いた碁だったのではないでしょうか(棋譜ダウンロード)。
まず黒13まで。棋譜並べをする人なら誰もが見たことのある陣形で碁はスタート。最近は私レベルと互先で打つ人でもこういう碁を打ってくることがあります。
白14 〜 黒17もよく見るカタチ。ただ白18は、私が打って、あるプロ棋士に「ああ、昔はよくあったね」と言われたことがある。でも黒23は「ゴツイ」ですよね^^。いや、こう打ちたくなるかもしれないけれど、後の上辺の打ち方を自ら難しくしてる印象がありませんか。「立派な一着」なんでしょうけど、右辺・上辺双方を考えると、私が打てば絶対に得しない打ち方。黒25を見ると、黒は上辺の形にそれなりに自信を持っていそうではありますが。
白32を打たれた瞬間「え、そこでいいの?」と思わず声を出した私。黒33があまりにも当然で、右辺の白がちょっと心配だった。でもハザマがあってとくに問題はないみたいですね。ちゃんと読めよ>自分。
たぶん黒77で一日目打ち掛けでしたか? ぱっと見ると黒地が多い。ただ、黒はどうも薄い感じがするんですよね。「薄く見えるということは張栩ペースかもしれないが、白が勝ちそうな気がする。これは白が勝てば名局だぞ!」と、ヘボながら盛り上がっていました(笑)。
で、封じ手の白78はこの辺。ってか、ここだと思ったわけじゃないけど、当然になんかちょっかい出していきますよね。ちょっかい出すために厚く打ってるわけだから。でも白94までの分かれとなって、もしかして高尾八段に何か読み違いがあったかなと思ったりしたのも事実。
ただ黒97に白98となれば、どうも白が優勢っぽい。黒は五手もかけているところがガラガラになっちゃうわけだし、中央・左辺ともに攻められ残り。ヘタすると黒地は右下だけなんてことに成りかねない。
黒は隙を見て109に回ったり、必死の抵抗(そして張栩本因坊の「抵抗」は往々にして「攻撃」になるんですよね^^)を見せてはくれました。しかし最終的には高尾挑戦者の危なげない勝利。
「碁とはこう考えながら打つんだ」と、いろんな棋士に、あるいはいろんな本に学んで来ました。そしてこの碁はそういう「考え方」の勝利とも言えるんじゃないかと、ヨワッチー私は思うのです。いやあ、格好良かった。この碁を見ることができて、高尾八段に七番勝負の舞台に出てきて貰ったことを本当に嬉しく感じているのでした。
投稿者 前田博明 : 2005年06月10日 23:22 | トラックバックこの観戦記とってもいいですよ!!!感性で書いているから、納得できます。日本はやはり、理論より感性派なのだと、思います。久々に面白かったです。続編を楽しみにしてます。
Posted by: 御宿を愛する者より : 2005年06月14日 04:55