2005年05月12日

囲碁と形 〜 初段前後の実戦から

本当はもうちょっと「俗筋」を検討するつもりだったんだけど、他に良い教材を入手したので、アマの実戦から見る「俗筋」の研究。







この碁。なんとなく「互角」に流れてますが、「なんでっ!?」という手があります。まず最大の問題は白14。ここをハネ継ぐのは「感性」な人とか「碁は自由」な人には「アリ」な手かもしれないけど、プロに言わせれば「見たことない」手。黒17までの交換となって、黒19と来たときにデギリなんて考えることが一切できなくしてる。自分の可能性を消す大悪手。

白28もそう。プロに言わせれば「何かを間違えて覚えてるに違いない」って手。実戦は黒29なんていうとぼけた手を打ったからさほどの悪手になってないけど(まあこの黒29を期待して白28を打ったのなら、白の志が低すぎる)、黒29でP18と「普通に」打ってれば黒「旨すぎる」形。

尚、プロに言わせて「絶対打たなくちゃいけない」カタチが黒35のツケヒキ。これは「打たないでいるわけにはいかない」手。

実戦者の棋力が「初段前後」ってことになってるけど、ともかくこういう黒35みたいな手を逃さないのが初段の条件(黒29で初段は名乗れないけれども)。

「囲碁は自由だっ!」なんて言わず、この黒35が「カタチ的に絶対逃せない」と思ってはじめて「そろそろ初段かも」という資格が生まれるかもしれないってもんです。

「自由」「感性」「いずれも一局」という言葉は、こういう「逃せない手」をノータイムで打てるようになってから出てくる言葉だと思います。「なぜ逃せないんだろう?」と考えるうちは、ともかく「きまったカタチ」を打つ「基礎」トレーニングをすべき時期かと思います。

2005年04月29日

囲碁と形 〜 「俗筋」(1)

「この本は適切な時期に読めば絶対強くなる」と、人に勧めているのが依田紀基九段の『アマの俗筋三つの大罪』。依田九段は本書の中で、「俗筋」を以下の3つに類型化しています。

  1. 敵を強くする俗筋
  2. ねらいをなくす俗筋
  3. 石の働きの悪い俗筋と愚形

「ノゾキ」や「コスミツケ」が1番目の代表で、無駄な利かしやむさぼりが2番目の代表例。そしてアキ三角が三番目の範疇に入りますね。今日は1番目の「敵を強くする俗筋」を見てみますが、その中では「コスミツケ」が一番わかりやすい。







定石進行たとえば上図のようなコスミツケはあまりにも代表的な、かつ初心者の多くが打ってしまう悪手。

これを悪手というのは黒1と立つことにより黒石が強くなっていることがまずひとつ。しそて、白4となったとき(これは極端な例ですが)右下隅が全く守れていないということもあります。つまり白のコスミツケは中央に向けての黒を強くし、かつ隅の地も守ってないということになる。

中でも相手の石を強くしてしまうというのは最悪。

右下、一番代表的な定石で分かれれば右図のようになるところでしょう。この図なら黒ばかりをいたずらに強化していることがない。上下両方からツメルことになれば、この黒は結構もがかなくちゃいけなくなるし、また上から利かして自分の地を広げていくのに役立てることもできる。

コスミツケを打ってしまう人は、まず相手の石を強くしてしまうことの悪さを知らない人が多いのかな。また、最初の図の黒5があるんだということを知らない人が多いんでしょうね。中には黒5が手になってることを知っていて「まあこの相手は打ってこないだろう」なんてことを考えて、コスミツケで騙しにいく人もいますが、まさに志が低い。

もうちょっと高度な(?)例を挙げておきましょうか。『アマの俗筋3つの大罪」に掲載されていた図。






上の図はアマ有段者同士の実戦例とのこと。文脈から、白14が大悪手なんだろうと想像はつきますね(^^)。

この図は黒15と立たせて黒を強くしている(下辺左方の地を守らせているだけじゃなく、後に自分に対する攻めに使われてしまう)だけでなく、自分の白6、14を重くしてしまっているという意味もあります。黒23までとなって、下辺の二子の扱いが難しすぎますね。

もちろん、板垣死すとも白14を打つ自由はいくらでもあるんですけど、それが碁を悪くするんだ、ひいては級位者のうつコスミツケなんて大半は悪手だということを知っていないと、囲碁がいつまでも指運ゲームになってしまいます。

ところで石のオモイ/カルイ。私ねえ、初段になった頃も「相手を重くする」という言葉がなかなか理解できませんでした。「重くなる」ってことは、すなわちそこに相手の石が増えてるんですよねえ。そうすると、ビビリな私から見れば「相手の石が強くなった」ように見えることも多かった。と、いうか、当時の私が「よし重くしてやろう」なんて思ってると、相手を強くしてることが多かった(爆)。

でも、上に載せた依田九段の本からの図を見てみると、下辺の白二子が「重くなってる」ってのがなんとなくわかるんじゃないでしょうか? 白14を打たなければ、外から利かして白6を捨石にするなんて作戦も取れたのに、14、15を交換してしまうと、簡単には捨てづらくなってしまってる。かと行って動き出して得をするとは思えない形をしていますよねえ。

許されるコスミツケ話を戻してコスミツケ。「私たちレベルが打つコスミツケがたいてい悪手だというけれど、でもコスミツケという言葉がある以上、その手を打つシーンがあっても良いのではないか」と思う人もいるかもしれません。それはもっともですね。

コスミツケを打っても良いシーンの代表例は左図。九子局で白が小ゲイマにかかれば、これに対してはコスミツケを打っても良い。なぜか。

これは黒が白を「攻めている」からです。つまり「強烈な攻め」がある場合にはコスミツケもあり得る。白1で小ゲイマにカカリ、それにコスミ付けられたら白はほぼ立つしかない。と、いうかそこで立たない白とはあまり打たない方が良いくらいかもしれない。

コスミツケを打つことにより、白の三々フリカワリをなくし、かつ白が動いてきたところで右辺星のサガリまで打てれば白の「技」が決まりそうなポイントにどんどん先着することができる。多子局では、相手の変化の可能性をどんどん潰していくのが勝利への近道(黒はどんどん形を決める)。

逆に、攻めのないところでコスミツケを打つのはほとんどが悪手。そのことを頭に入れ、「感性」でコスミツケを打たなくなれば、それだけで碁はちょっと強くなります(^^)。

2005年04月16日

囲碁と形 〜 「厚み」ってなんだろう?(2)

黒必勝形「アツミ」よりももっと広い話になっちゃうけど、まず左の形。この形は一般には「黒の理想型」と言われます。

まずがっちりと右上の地を確保し、そこから右辺星、上辺星と、アツミを中心に勢力圏を拡大してる。また、右下もじっくり腰を落として、右辺星との連携で、白からこの右下への働きかけも難しくしてる。こんなことになっては黒を持っていれば負ける気はしません(気がしないだけで負けるかもしれないけど)。

囲碁では、「中盤に強い人」とか、「ヨセだけは間違えない人」とかいろいろあるけど、そういう中盤・終盤の「テクニック」を通用させなくしてしまうパワーがカタチにはありますよね。

左図の白は「あくまでも我が道を行く」。もちろんこういう打ち方もあるんだけど、相手の両小目+シマリを見れば、相手に理想型を与えないように打っていくのが一般的。

相手の右下が星の場合は右辺星下へのワリウチ、右下が小目の場合は小目への大ゲイマガカリがわかりやすいって話は石倉九段の講座にも出てきました。

その時に気を付けたいのが、相手の小目+シマリに対して、いきなり詰めるカタチってのはほとんど考えられないということ。なぜか? それは小目+シマリの僅か二手で、その隅は非常に安定し、ほとんど死なない石になってる。つまりはそれが「厚み」として機能しているからなんです。

ワリウチの効果右の図。相手の小目+シマリに対して、ワリウチを打たずに相手に打たれてしまえば、右辺全域が相手の勢力圏になってしまう。でもワリウチを打つことで赤い部分に限定、ないし、相手が受けなければそのときは小目+シマリに二間で詰めて、相手の小目+シマリを「地だけ」の手にしてしまうことができる。

ごくごく初心者向けの説明では、小目+シマリってのは「地を確保しているものの、中央への足が遅い」と書いてあることがあります。でも実は小目+シマリってのは中央に向けての勢力を産み出し、それにより相手の打ち方を限定するという意味もあるんですよね。

それもあって最近の碁では相手が小目に打てば取り敢えずカカッておくなんて打ち方もよく為されます。「布石は相手の趣向。碁はそこから」という考え方から、「どちらがさきに相手の打ち方を制限するか」という先手争いにもなってきてると言えるのかな。相手の隅に星と小目があった場合に、いっぱんに小目へのカカリを優先するのもこんな発想。

ものの本によれば、囲碁はもともとはある程度の石を盤面に置いてから打ち始めたとのこと(正確なソースが手元にありません)。それを現在のカタチにして「布石」という考えを採用したのは、確か日本が一番だったのかな? そしてさらには「布石以前」という風になってきてる。これは流れとしては必然なのかもしれませんね。

余談はともかく。

小目+シマリ(ケイマないし一間)を、僅か二手で構成される「厚み」と考えると、打ち方が制限されることも多いけれど、盤面を見る目がかわってきて碁が面白くなることもあります。また、そういう発想ができるとウラガカリなんて技で相手の隅を固めさせても、「厚みを働かせないことで満足」という発想ができるようになってくる。そういう発想ができるようにならないと、「中国流」とか「三連星」なんていう大きな模様碁には常にヤキモチで敗れ去ることになってしまう。

「彼我の強弱の認識不足」や「ヤキモチ」というのは、囲碁初級者の進歩を阻害する二大要因だと思います。そして初級者同士でカタチを無視して打つ碁は、この二大要因をなかなか改善できなくしてしまう。

そんな意味で、私は弟子たちに「自由な発想」よりも、「一般的にはどうなのか」、「なぜ一般的にはどうなのか」ということを知って貰いたいと考えています。

ちょっと「半端」な話になってしまいました^^。次回は「わかりやすい絶対の悪手」を取り上げてみたいと思っています(変更の可能性もあり)。

2005年04月14日

囲碁と形 〜 「厚み」ってなんだろう?(1)

厚みとはなんだろう?初段を名乗り始めた頃、強い初段と打ってみて、彼我の「カタチ」の差に驚愕した私です。「カタチが打てるかどうか?」というのが有段者・級位者の差なんだろうなあと感じました。

そんな私の(エラソーな)「カタチ」講座。ちょっと間が空きましたが第3回です(^^)。本日のお題は「厚み」。

「厚み」ってのはいろんな定義がありますが、まあ「どうやっても死にそうもない石」ってのがわりと簡単な定義じゃないでしょうか。

「厚み」ってをテーマによく出てきそうなのは左図(図は『布石のベスポジ』より)。この図で「厚み」は左下の白。この石を殺そうと思ったら何手連打すればよいでしょうか^^? まあ普通はこんな石を取ろうなんて考えません。そして「取ろうなんて考えない」というところから一歩進んで「厚みに近寄るな」という格言が生まれてるんですね。

ちなみにこの図で黒番、どこに打ちましょうか? 答えは右下の星から下辺に向けての大ゲイマ。白の厚みの働きを制限しているんですね。厚みがあると、そこに近づいてはいけないけど、厚みを働かせてもいけない。その辺のバランス感覚が難しい。

この図で下辺への大ゲイマ以外を打てば、白は当然右下の星の石にかかってくる。相手の厚みが控えているので挟むわけにも行かず、黒は受けることになるでしょう。すると白はトビくらいを打って下辺を広大な地模様としてまとめられてしまうんですよね。これだけの厚みがあれば、もはや打ち込むわけにもいかない。

やきもち「じゃあ厚みを働かせないように、下辺の星下あたりに打ったらどうだろう?」。そう、最初のうちはどうしてもそう考えてしまいます。でもそれこそ厚みを背景に持つ白の思うつぼ。白は当然打ち込んできます。

右図のような進行が考えられますか?

星下に打った黒はまだまだ生きてない。打ち込んできた白も生きていませんが、右上にある白と連絡しそうだし、また右下星の黒を攻めることにより、簡単に生きることができそう。

こうなってしまうと、黒が右辺をまとめることもできなくなるし、中央の黒を生きにいくうち、ヘタをすると上辺の黒まで痛んでしまうかもしれない。こうなってしまえば、もう黒にほとんど勝機がないと言っても良いくらい。このような進行になってしまうきっかけとなった黒星下の手を「ヤキモチ」と呼びます。白の方から見れば「厚みを攻めに使う」ことができていて、もうまさに理想的なのです。

最初の図となったとき。考えるべきは「白の厚みに働いて欲しくない」ということ。でも他にも考えるべきことがあります。白が左下で厚みを築いたのは、黒が左下隅に「実利」を取ったからです。つまり「実利と厚みの分かれ」になってる。白は「厚み」という武器を手に入れたけれど、黒も「実利」というキャッシュを得てる。

すると、そこで「白の厚みに全く働いて欲しくない」と考えるのは「強欲」なのです。自分が左下に取った実利分くらいは働かれてもしょうがない。そう考えるのが「バランス」です。「ちょっと働かれるのはしょうがないけど、自分の実利以上に働かせたくない」と考えるのが正しい。

よって右下を大ゲイマでシマリ、「白さん、厚みを少々働かせるのは仕方ないので認めます。でも黒もこのシマリによって右下隅にまた地ができそうでいいでしょ!」と言ってみる。

白は自分の厚みの働きを制限され、かつ黒にさらに地を稼がれそうで難しい判断を強いられる局面となります。右下大ゲイマにしまったところを次にサガリでも打たれたら地が大きすぎる。だからと言って裾ガカリなどでケシにいったときに右辺上方の白が痛まないだろうかなどと考えることになりますね。

この「ヤキモチ」というのは、私たちの碁には非常に多く出てきます。前に問題になった記事(苦笑)の黒5。これもここからいろんな打ち方があるんですが、初心者がこれを打つとき、その背景に「ヤキモチ」があることが多いんですよね。左下の白4にシマリを打たれたあと、この左辺での白の働きを乏しくしたいと考えて打ってることが多い。確かに白の働きはある程度制限できるんだけど、自らのテリトリーである右辺を痛めてしまったりすることが多いんですよね。そういう発想ばかりしてるとなかなか碁に勝てなくなってくるし、上達しなくなってしまう。

ところで「厚み」。この記事では「「どうやっても死にそうもない石」」という定義を採用しました。ってことは、冒頭に挙げた図みたいな「誰が見ても厚み」というカタチだけでなく、もっと少ない石計で「厚み」になってることはないんでしょうか? それはありますね。次回はそういう「厚み」を取り上げてみたいと思います。

尚、余談として、星からの大ゲイマの使い方もついでに意識してみてください。私は弟子たちに「星からのシマリは小さいよ」といつも言っています。手堅く星から小ゲイマに締まっても、まだ三々が確実になくなるわけじゃない。簡単に裾ガカリなんか打たれても、さほどの地が隅に付くわけでもなく、単独で星からシマルのはとても価値が低いことが多い。

でもこの記事で取り上げた図のような場合は大ゲイマがすごく効果的。このように、星からシマル場合には「相手の厚みを制限する」場合に「ツカエル」ことが多いですね。

2005年04月09日

囲碁と形 〜 布石(2)

さて、アンチ「囲碁は自由だ」派の私の「カタチ」講座(笑)の第二回。今回も「布石」です。題材はひと桁級〜初・二段くらいまで楽しめる『依田ノート』より。

将来の可能性で感じるカタチ序盤でこんなカタチになりました。あ、ちなみにこういう図があると「手順」を考えてみるのも良い勉強になったりします。本図は黒二連星に白向かい小目。ここまでは順番に打ったと考えて良いでしょう。そして黒が左上にかかってツケヒキ。で、白が先手を取り左下シマったところに黒が下辺星下。そして白が右辺にワリウチしたところですね。

前回の問題に比べるとかなりレベルが高いですね^^。右辺だけ見るとどちらからツメても全く同じカタチです。

あ、そうそう。「なんでAかBが候補なんだろう?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。上辺を打って「白の発展を妨げる」なんて考えた方いらっしゃるでしょうか? 私の弟子の中には何度言ってもこの図で上辺(しかもツメ」を打つ人もいます(笑)。

この図、この段階で上辺を打つことは「まずあり得ないカタチ」だと知って欲しい。左上の白のカタチ。これは単にツケヒキをキメタだけのカタチですが、これがもう鉄壁なんです。黒がツメていってもピクリともしないカタチ。そんなところにツメていっても無視されるか、むしろ逆に弱石として攻められることになる。そんなツメははっきり悪い。「手の良し悪しなんてわからない」と言い続ける人もいます。しかし「そこからお互いに最善手を打ったと仮定すると」という前提で考えると、相手の強い石に近づく手は「悪いカタチ」と認識されており、そこから「厚みに近寄るな」という格言も生まれているのです。

それから下辺。せっかく星下に打ったのに無視されたから「怒ってみたい」と考える方もいるかもしれません^^。たとえば左下小ゲイマジマリに向かって二間のヒラキ。確かにそれは考えられない手じゃありません。先日の記事に書きましたが、左下のカタチは下辺に向けてパワーを溜めている手。で、あれば二間に開いて相手のパワーの発揮を制限しているのではないか? うん、その考えはあり得ますよね。ただ、左下隅の白のカタチもかなり「強い」んです。「厚み」とは言いません(近寄ればいろんなアジも出てくる)が、最初からそんなに強い石に近づくのはよろしくない。

そんなわけでまず、候補は右辺に絞られてくるのです。

まず目に付くのは右上の黒が「ひとりぼっち」だということ。ひとりぼっちだからなんとかしたいと考えるかもしれない。本当はBと詰めずに小ゲイマにシマリたいと考えるかもしれない。

でもね。これも私がよく言う(ってか、囲碁の常識なんですが^^)んですが、星からのシマリってのは結構小さいんですよ。大ゲイマにシマっても三々が空いてるし、小ゲイマにシマっても、さすがに三々は打ちにくくなるけど裾ガカリだのなんだの、いろいろ鬱陶しい技が飛んでくる(笑)。星に打った以上、隅は「地」ではなく「拠点」くらいに考えてる方が気楽。かつ、相手が近寄ってきてから「拠点を確かめる」くらいに考えておくのが普通です。

そうして考えると、右上は確かにひとりぼっちだけど、まだ近くに相手の石も来てないわけだから、小ゲイマや大ゲイマにシマルという考え方が間違ってるのがわかる。

では答えはBなのか?

回答に飛びつく前に、下辺星下に打った石のことを考えてみましょう。下辺星下に打った石は、左下白のシマリを制限する意図でした。しかし囲碁で置いた石にひとつの役割しかさせてはいけないというルールはない。相手が打ってこなければ右下星と連絡して、下辺を地化させる役目を担わせてもいい。囲碁は最終的には地の大小を争うゲームなので、右下の星から、下辺星までの地になれば「それなりに大きい」地となります。

なんだ、それなら14の十七あたりにシマルのが大きいんじゃないの?

それも「小さくはありません」。でもその手、ただ守るだけの手ですよね。それに先にも書いたようにケイマのシマリにはまだ裾ガカリなんて手が残される。じゃあ15の十七、コスミでしまったらどうなのかと考えるかもしれません。それもあり得ないじゃないですが、すると今度は星下との間が四間と広いのが気になります。いずれのシマリも、「ただ守るだけ」で相手に響いていない以上、次に相手からどのような手が飛んでくるのかわかりません。

「地になればでかいけど、単純に地化しようとすると相手から技が飛んでくる」。そんなときに使うのが「模様」という技術

黒Aと打ったところを想像しましょう。白はワリウチした石を放置するわけにもいきませんから、普通は17の七に二間開きするのがカタチ。黒は右上隅をコスミで守るでしょうか。それで一段落。

黒の模様で、一段落した際の右下。色を塗ってある辺りに生じた黒のカタチを「模様」と言います。

さほど大きな模様ではないんだけど、この模様がそのまま黒地になれば、まあ黒は負けません。このまま地になれば黒は負けない? それは逆に言えば、白がこの黒模様に対して「手出しせざるを得ない」ということです。

白はたとえば右下の星にカカリ(14の十七)なんかを打ってくるかもしれない。でもそういう「打ち込み」は大歓迎。打ち込んできた石をイジメルうちに、右下の地を確定させ、左下の白のシマリを無効化させ、かつ場合によっては右辺で二間に開いた白への攻めを見る。

全部説明していると長くなるので別項に譲ります。ただ、「単純に地化しても消されておしまい」になりそうなところで使う「模様」という技術は覚えておいて損はないですよ(^^)。この「模様」という技術は、初級突破の重要なキーである「ムサボリ」や「ヤキモチ」の話とも繋がってくるんですが、それはまた別の機会に。

と、このように考えて打つのが囲碁の「カタチ」です。こういうふうに考えて打つためには、最初から「変なカタチ」を打たないのがわかりやすい。「個性」とか「着想」とか「自由」なんてのは、こういう基本のカタチを踏まえた上に生まれてくるものだということを理解して欲しいのです。

2005年04月08日

囲碁と形 〜 布石(1)

しょっちゅう言っていますが、私は初心者のうちに「囲碁で打つ手は自由だ」とか「感性の赴くままに」(笑)なんて言って打つ打ち方が大嫌いです。

理由の第一は、私が自分の囲碁能力なんて信じていなくて、何らかの指標がないととても碁を打てる気がしないこと(爆)。それからウワテの方や、棋書などに「これがカタチ」と教えられ、確かにその「カタチ」の有効性に気付かされたこと。さらには長く初心者教室に通う内に「カタチなんて」とか「自由に」と言っている人よりも、「普通はこう打つ」を実践している人のノビが早いように感じたこともあります。そしてもちろん、「自由」ってのは、寄って立つべき何らかの「モノ」があって初めて成立するんだという信念もあります。

小目で締まられたさいの打ち方は?たとえば左図。白番ですが A 〜 C の選択肢を示されれば、どこを一般的に「正解」とするでしょう?

いや、簡単すぎる問題ですが、私は囲碁を初めて最初の三ヶ月はそんなことも知らずに打っていましたよ^^。そう、この問題の解答は「C」。黒に「C」や、その一路上にヒラかれると、一般的に言われる「理想型」。白「C」はその理想型を邪魔する「カタチ」なんですよね。

この白「C」は、プロの実践例にも頻繁に現れるカタチで、テレビ対局などを見ていても「おお、そうか」なんて感じる場面も多いはず。

もちろん「C」に打たないケースもあり得ます。あるいは頻度は少ないけど「C」の一路左に割り打ちするケースもあります。ああ、「C」の一路下に打つこともありますよね。でも「C が最も普通の『カタチ』」ということを知っておけば、そこを外した手の意味や狙いを理解(しようと)する助けになったりもします。

たとえば白が右辺を打たずに A〜B のどちらかを締まってくるようなら、相手は「アラシ」に自信を持っているのかもしれません。あるいは右上の星にカカってくるなら、相手はカカリっぱなしで手を抜いて何か技をかけてくるのかもしれない。四線に割ってくるなら、相手は「将来打つケシを今打っただけ」なんて感じてるのかもしれない。

尚、ちょっとあり得ない図ですが、右上が白、左上が黒(一般に黒番は右上隅から着手するという慣例があるので「あり得ない図」と書いています)だったと仮定しましょう。

その場合白は、右下の黒のシマリの効力を削減しようと考えると、右辺を打つのが良いのでしょうか、それとも下辺を打つのが良いのでしょうか?これも私は碁を打ち始めてしばらく知らずに打ってました。

「一般的なカタチ」は右辺。先の問題図で言うと C や、一路進めて 17 の十一に打つのがカタチとされています。

なぜなら右下の黒のシマリは、右辺に向けてのパワーを蓄えているから。初心者の頃の私は、右下のシマリが右辺方向にパワーを蓄えているんだとも思っていませんでした(爆)。でもある本でこのカタチの意味を知り、それを意識することですごく碁が打ちやすくなったのを覚えています。打った石が連携して働くようになっていったんですね。それに自分の打つカタチが、プロのカタチに似てきたなんていう自己満足もありました(笑)<布石段階なんですから似せるのは簡単ですが、最初はそれができるだけで嬉しいものです^^。

言わずもがな、囲碁は長い歴史を持っています。で、やっぱり数多くの先人達が「カタチ」を考え続けてきたんですよね。そういうカタチを知ることは、碁を理解し、そしてうまく打つための第一歩だろうと実感しています。カタチを「外す自由」ってのはもちろんあるんだけど、その「自由」を効果的に活用するのにも、まずはカタチを知ること。

ついでがあったので(何のついでだか(苦笑))、そういう「カタチ」についていくつかまとめていけたらなあと考えています。