- 言葉たち
■ 「私、前田さんの碁が好きですから」。
1年くらいも前になるのかな。壁にぶつかって、碁を打つ自信をまったくなくしていた私に対して、とある女性が言った言葉。弱いくせにエラソーに(苦笑)、「俺と打っても、その人のためになんかなりゃしねー」なんてことを(いや、本当にエラソーだ(笑))ウェブに書いた。その記事を読んで、照れながら彼女が必死に言ってくれた言葉。
いくら厚かましい私でも(爆)、さすがに「そうか、この子は俺の碁が好きなんだな」とは思わなかった。でも、さほど親しいわけでもない私を、一所懸命気遣ってくれているんだなとは思った。その気遣いが嬉しかった。
そういうことを言わしめた気遣いが、荒んだ気持ち(笑)を慰めてくれて、そして今の私に繋がっています。
■ 「今の前田さんになら負けても納得いきます」。
これは実名を出して問題ない。こばぴの発言。彼女は、言うなれば私の一番の被害者だ(笑)。扇子で教室中のみんながびっくりするくらいの音を立てて殴られることはさておき(爆)、級位者だった私にむちゃくちゃな指導碁という名のいぢめをくらって碁を壊した。一応「こんな碁に負けても悔しく思う必要なんてないんだよ」とフォローはしたものの、彼女は相当に悔しかったに違いない。
「ちょっと互先で打ってみようか?」。最近になって彼女と互先で打ってみた。50手ほどならべた時点で、盤面に置かれた石の形は既に碁になっていなかった。そこで出たのが彼女の発言。
私は強くなりました(笑)。そろそろ棋歴も二年になり、そしておたく心(苦笑)を持つ私は、徹底的に碁にはまってた。今なら、教室の生徒たちに「指導」できることも増えてる。
「今の前田さんになら負けても納得いきます」。この言葉は、私の「ハッピー・マンデー教室」に対する思いを認めてくれた言葉。彼女の意図以上に(?)私の心に響き、そして私を支えています。
■ 「合宿前に打ってみて貰えませんか?」
勇気が必要だったろうなぁ。ハッピー・マンデーの、比較的新しい生徒が私に言ってくれた言葉。
彼女は私の傲慢さ(苦笑)も知ってるし、怒り出すと手が付けられなくなることも知ってる(大笑)。そんな私に向かって、彼女は勇気を振り絞って「打って下さい」と言ってくれた。
もちろん。彼女は「まあ教室では一番強いんだろうし、ちょうど良い練習になるかな」くらいに思っていたんだとは思う。でもこの言葉で、私は「ああ、教室にいて良かった」と心から思った。
実はあちこちで言いふらしている。「いえね、先日ね、教室の子が私に向かって『打って貰えませんか』と言ってきたんですよ。あはは。俺もちょっとは認められてきたみたいですよ」。この言葉もまた、彼女の意図以上に拡大解釈されて(爆)、私を大いに励ましてくれました。
■ 「ご指導頂けますか?」
最近、教室の男性たちが掛けてくれる言葉。
「前田さんは結局女好きなんですね」と、とある棋士に言われたことがある。まあそうなのかもしれない(爆)。でも本当は、ハッピー・マンデーの中では、男性と仲良く(仲良く、ってのもなんか変だけど)したいと思い続けていた。
「結局さぁ。俺が偉そうなのがいけないんだよね。なんか若ブッテいて、いつもだらしない服装をして、それなのにいつも若い女の子たちといる。そんな奴がいたら俺だって仲良くしたいとは思わないかもしれないもんな」。そう自省してはいた(笑)。でもそんなに若ブッテいるつもりはないし(苦笑)、だらしない服装は自転車通勤のせいだし、ハッピー・マンデー教室では若い女の子の比率が高いから、女の子といる機会が多いのもしょうがない(笑)。それに年下になら「教えてあげるよ」と言いやすいけど、年上の方々には「ご指導します」なんて言いにくいじゃんかね(笑)。
でも。ある方がまず最初に声を掛けて下さった。その方がうちのサイトを見ているのかどうかは知らない。でも「ご指導頂けますか?」なんて声を掛けられて、私は本当に嬉しかった。その方には同年代の仲間も多くいらっしゃり、その仲間の方々も声を掛けて下さるようになった。
自分から声を掛ける勇気を持たなかった私に、みなさんと打つ機会を与えて下さって、本当に感謝しています。「前田先生」と呼ばれるのはちょっとアレですけどね(笑)。
■ 「なんだ、強いじゃないか」。
ちょっと名前を出すのに差し障りがあるかもしれないので控えるけれど、とあるプロ棋士が言ってくれた言葉。一度、幸運に恵まれて指導碁を打って頂いた直後には言われた。「君、師匠なんて言われてるのに弱すぎる」。
「また来週打ってあげるから棋院に来なさい」。そう言われて私は棋院で彼と二度目の対局。今でもそうなんだけど、当時の私は重傷の「ウワテ恐怖症」。「ウワテの方が打って下さるのに、その碁を壊してしまっては申し訳ない」。そんなことばかりを考えて、手は縮こまり、思考はほとんど停止していた。
「俺は強くなる必要があるんだ」。そう考えて、「とにかく、もうちょっとちゃんとした碁を打とう」、と二度目の対局の前に、必死に自分に言い聞かせた。大袈裟でなく恐怖でふるえそうな自分を、「ここで見捨てられたら、強くなる事なんてできないんだからね」と叱責した。
「なんだ、強いじゃないか。初段だな」。二度目の対局の後、そのプロ棋士が言ってくれた。「今日の碁は残しておこうか」と言って、おもむろに売店で碁罫紙とペンを求めて棋譜を書いてくれた。「じゃあまた打とうな」と言って立ち去り際に、「そうだ、先日失礼なことを言っちゃったお詫びと、今日の碁の記念に」と扇子を頂いた。
一度目で完全に見捨ててしまっても良かった私に二度目のチャンスをくれて、そして認めてくれた言葉。この後、別のプロ棋士とも対局する機会があったんですが、そのときにはこの「強いじゃないか」の言葉が支えてくれました。後に対局した棋士の方も「ああ、やっぱり前田さんは強いんですね」と言ってくれた。二度目のチャンスを与えてくれた棋士がいなければ、私のウワテ恐怖症が(多少なりとも)改善することはなかったでしょう。
投稿者 前田博明 : 2004年06月13日 23:15 | トラックバック